Min Dead Blood ~支配者の為の狂死曲~(DVD Sp edition)


吸血鬼が蔓延る街で支配を目論む吸血鬼と、それを狩るハンターのお話。
分岐が複雑な大ボリュームの燃えゲーで、ブ・サイクブランドを世に広めた意欲作です。
エロゲーの吸血鬼モノといいますと耽美な世界観が現れがちですが、本作は一貫してダークな雰囲気に仕上がっています。


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蟲愛と並ぶブサイクの最高傑作で、蟲愛の感想にも述べましたが、まさに「エロゲー」という作品です。吸血鬼というテーマで壮大なストーリーを描いてくれています。
シナリオも深くどっぷり、エロたっぷり。戦闘シーンたっぷり、バイオレンスたっぷり。
はじめに申しておきますと、結構グロいです。描写のグロも含め。トチ狂ったサブキャラがグロへ引っ張って行っています。でも嫌悪を抱くグロじゃなくて見られるグロかな。自分はグロとは雰囲気を楽しむものと思っています。
結構リメイクがなされていて、無印版DVD edition版、FDとくっつけてシナリオ追加したComplete disc版がありますが今回はDVD edition版の感想になります。

【あらすじ】(DLsiteさんの紹介まま)
本土西端の海上に建設された人工都市『千砂倉』——。
それはバブル絶頂期に計画され、そして頓挫した一大アミューズメントパークを利用し、
高級リゾート地として整備した街である。

街の中央部には、『佐伯邸』と呼ばれる洋館が建っており、主人公・七瀬しずるはその地下で目を覚ました。
まどろんだ意識の中、ふと気付けば自分に寄り添う二人の美少女、麻由と麻奈——。
しどけなく裸体をさらした彼女達に、しずるは血を吸われ、そして肉の快楽を与えられた。
自分は誰なのか……。
何故、こんなところにいるのか……。
いくつもの疑問は、溶け込むように魅惑的な血の香りと、快楽的な衝動によって打ち砕かれた。
過去の記憶など思い出したところで意味はない。
「せっかく吸血鬼になったんだ。それなら吸血鬼の愉しみ方ってもんを、味わわせてもらうまでだぜ」
不死身の肉体を手に入れたしずるは、そう言ってほくそ笑んだ。

時を同じくして、一人の少女が千砂倉の街に足を踏み入れた。
栗色の髪と、血のように赤い眼。
容貌とは不似合いな、憎悪と殺意に満ちた声がこぼれる。
「吸血鬼は——全て排除する——!」

見えない糸で繋がれた、『奪われた者』と『与えられた者』。
やがて二人は出会い、物語の幕が開く。
それは敵としてか、それとも——
あたかもその結末を知っているかのように、一本の桜の樹がざわっと風に揺れ、
血のように赤い花びらを散らした……。

【シナリオ】
名ライター・万夜氏を起用。吸血鬼というテーマでここまではなしを広げて、ここまで上手く折りたたんだことに感動しました。起承転結、まさにお手本のような作品です。
本作では、吸血鬼に血を吸われた人間は眷属となり、強大な力を得て強い性衝動に駆られ夜な夜な欲望を満たすべく血を求めて彷徨ってしまうという設定です。主人公含め一部の吸血鬼はこの衝動に抗うことができます(できていないともいえる)。千沙倉の街は吸血鬼が増えつつあり、大元の吸血鬼を滅亡へと追いやるため「ハンター」協会から一人の少女が派遣されてきます。
吸血鬼の身でありながら性衝動に抗い、自分の家族を壊した吸血鬼に復讐を誓う榊悠香がメインヒロインの一人です。最初の物語ではしずる自身吸血をしない方針を貫くと悠香に出会うことができ、彼女と交友を深めていけます。吸血鬼であることで性衝動に捉われもがき苦しむ悠香、吸血鬼に激しい憎悪を浮かべる悠香の描写が特徴的です。吸血鬼であることを隠して悠香に近づくしずる、ハンターであることを隠してしずるに近づく悠香。まあ起こりうることは想像つきますね。悠香視点の描写が非常によろしかったです。

過去への贖罪編では、しずるがミイラとなる前、人間時代のお話が展開されます。かつての婚約者で、今はしずるを殺す為にハンターになった沙希が登場するほか、吸血しなくても平常でいられるしずるの特異体質の謎についても明かされます。
こちらも展開はおおよそ想像のつくものでありながら、読みやすく自然に書いてくれていたと思います。幕引き、余韻までの流れが文句のつけようがないくらい素晴らしかった。
ネタばれしてしまうとハッピーエンドではないのですが、そこが良い。

未来への旅立ち編は、ありていにネタバレ編です。黒幕との関係性が描かれます。おおよそ予想はつくんですけどね。結末まで悠香視点というエロゲでは珍しいヒロイン視点効果。板挟みに苦しむ悠香が自分の居場所を自覚したとき、物語が動きます。
ボーカル曲「Vampire」が流れながらの血みどろの戦闘シーンがめちゃくちゃアツい。アニマが地味に良いキャラでしたね。こちらもエンディングまで余韻の残る終わり方で本当に素晴らしい。

 

終わって振り返ってみると、この3部構成に非常に意味があったと思い知らされます。
混じり合うはずのない2人の邂逅。切ない過去話。そしてヒロイン視点でのクライマックス。終わってみれば主人公は悠香だったんじゃないかとも思ってしまうわけですね。
大筋をたどると純愛路線なのですが、BADENDに傾くと途端に凌辱・グロ要素が増します。
この構成も良かったように思います。攻略を円滑に進めるためにBADENDはいくつか見る必要がありますが、グロ嫌いな方は大筋をたどれば一応エンドにたどり着けるわけで。終わってみればあれこれグロゲー?良い話じゃんと変換できると思います。好きな人は寄り道寄り道でいいわけですしね。
終始しずる視点ではお話に深みが生まれなかったと思うんです。魅力的な性格のキャラクターではありますが、ポッと出の訳あり特異体質吸血鬼と酷評することもできるわけで。
訳ありハンターの悠香の描写が追い付かないと中途半端なゲームになっていたと思います。
メインヒロインであり、主人公枠でもある悠香。良い立ち位置です。
しずるもしずるで人間臭さが残っており、良主人公です。変にヘタレとかじゃないのが良いですね。ちゃんと血を吸えばすごく強くなるので、TUEEE主人公で本当に良かった。ちゃんとフラグ立ててルート進行しないと悠香に殺されてBADENDになります笑
シナリオ面で評価しておきたい点として、戦闘描写の細かな描写が挙げられます。悠香の操るパイルバンカーがどうしてもインパクトが強く、印象に残りますね。悠香との戦闘シーンがとても良い。紙芝居絵でも、音楽と絵が良ければここまで臨場感が生まれるんですね。流血注意です。
処刑シーンなどもありショッキングではありますが、ブサイク他作品と比べてもグロはややマイルドに感じました。見るに堪えないということはないと思います。
【システム面・攻略面】
無印版と比べてセーブ面の改善がなされているようで、おおむね不満はなかったです。
攻略面ですが、これはやや難ありですね。攻略ヒント無しの攻略は不可能だと思います。フラグ管理が膨大で、支配度・吸血度を管理しつつ規定日数以内にクリアしなければなりません。攻略を見てもどこまで進んだのか実感がなくなってしまいます、ややこしすぎて。
蟲愛でもそうですが常人向けの攻略難易度ではないので、ネットの海から探したり公式サイト見たりをお勧めします。
面白いので最後まで投げないでください笑
【声】
エロゲに珍しく主人公しずるもフルボイスです(DVDedition版)。パイルバンカーにまで無機質なボイスが挿入されているのが素晴らしい。何度も言いますがこの2点が大きい。ファンディスクではオトナの事情か、しずるボイス・パイルバンカーボイスがカットされていました。ここまで違うものなのかと愕然とします。戦闘描写のあるゲームはしっかり声入れしてほしい、そう強く思うようになりましたね。
話を戻しまして、サブキャラにもしっかりボイス完備。このゲーム魅力的なサブキャラが多いです。あるなしの違いは大きいですからね。悠香・沙希・マスターの声が好みでした。
【音楽】
OPEDともにオークさんの大好きなデンカレを起用。疾走感のある主題歌「Vampire」、切ないED「櫻舞う」豪華なサンドイッチです。本当にはずれがない。
挿入歌・ED「サクラチル」も世界観を壊さない柔らかい詩です。
まずOPムービーが非常によろしい出来。これで惹かれると思います。これで購入を決めてしまってもおおよそ間違いはないでしょう。
BGMですと「Blood&Murderlive」が強く印象に残ります。江梨衣専用BGMみたいに記憶しています。
【キャラクター】
しずる…いうまでもなく主人公してくれた主人公。小技を使わず純粋に強いのが大変good。
真由・真奈…本作では出番が多いながらも、メインヒロインではなく立場を奪われているのが苦しいか。真由が吸血鬼らしいビッチさを演出してくれたことで、血に飢えないしずるとの対比が描かれていたことはやはり大きいでしょう。真奈はむっつりスケベでしたね。FDやると評価変わりますが笑
醍醐…ふてぶてしさが良かった。ラスボスだけあり、変に弱くないのも良い。
悠香のパイルバンカー…オークさんのお気に入りです。ボイスがついてたおかげで好きになってしまった。
悠香…真章の主人公かつメインヒロイン。一作品で悠香の謎をしっかり描いてくれたので、非常に感情移入しやすかった。移入できるかどうかなんてのはエロゲ問わず物語の永遠の議題ですが、オークさんは移入したい、移入できることが大事かなと考えています。
【えっちしーん・絵】
和姦から強姦輪姦、寝取り、凌辱、グロ、スカトロ、処刑となんでもありのバーゲンセールになっています。大ボリューム。おなか一杯。抜けるかは置いといてヌキゲーとしてみればフルプライスでもお得なボリュームだと思います。が、非常に残念な問題がありまして、攻略のあまりの難易度・煩雑さにエロを楽しむ余裕がなくなってしまうことです。それも結構な頻度でエロが挟まれるので、どっちつかずになってしまいかねないような気がします。何が悪いんだろうと問われると非常に難しいのですが。
絵に関しては特徴的な輪郭の描き方が気になりますが、造形はきれいで見やすく良い絵だと思います。

【まとめ】
本作の不満点は攻略難易度と、グロに振り切れていない中途半端さにあると思います。難易度はプレイされた方皆が感じるでしょう。グロゲースキーの方がプレイすると中途半端さを感じると思います。振り切れたグロは東、田上ぐらいなので。大筋が純愛であることでこのようなズレが生じるのかなと。オークさんはこれでもおなか一杯なのですが、目を背けるほどではないので、グロゲーと聞いてプレイされた方は肩透かしを食らうかもしれません。グロの雰囲気、といったほうが正しいですね。
あとは文句のつけようがない作品だったと思います。シナリオの起伏が楽しめてしっかりシリアスしている。燃えゲーとして遜色ない戦闘描写。吸血鬼支配の世界観を守っており、設定負けしたキャラクターが少ない。主人公や無機物にまでフルボイス。
無印版はいくらか足りない部分があるようですので、DVD editionかComplete discを購入されるとよろしいかと思われます。
ブサイクゲーの中では比較的マイルドな表現で、純愛路線なので新しいジャンルを開拓したい方は一度手にとってみてはいかがでしょうか。
【FD】
ファンディスクの感想もちらっと書いておきます。
FDでは本編で攻略対象にならずイマイチ館の謎が解き明かされなかったということで真由・真奈・アリサを攻略することができます。真奈のとんでもない本性が垣間見えて面白かったです。
他サブキャラクターのルート・えっちしーんについては蛇足感ありますが、江梨衣ルートは田上さんが強烈すぎて…  思い返してみれば田上さんしか浮かんでこないくらい強烈でした。スカッとしましたが笑
グロは田上さん以外薄めなので本編を攻略された方はぜひ購入をおすすめします。設定資料館を見れるのが素晴らしいですね。やはり、売れるゲームってプロット段階でめちゃくちゃ練られてるんですね。感服しました。
残念な点としましては男性陣とパイルバンカーのボイスカットでしょうか。本編から流用してもよさそうなシーンですら無かったので、容量の都合でしょうか。BGMCDも分けられていたりで不便だったのですが、何にそんなに容量を割かれていたんだろう…?
本編の流れをくんでおり、マップを選んでいく形式です。本編に比べれば難易度はガクッと落ちますね。
全クリアで出現する「支配者の狂笑曲」がとても良かった。ほっこりしました。FDですしね、箸休め欲しいですよね。悠香私生活ドジっ子すぎてさらに魅力が増したと思います。


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ミュルミナ

エルフの森のオークさんです。 シミュレーション系やRPG系を好みます。変身ヒロインモノに目がない。抜きゲーや同人ゲーも好みます。 最近勉強のために個人ブログを作りました(https://2dmania.fun) 自分の感想の写しですが、そのうちコンテンツ追加していきます

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