ファンタジーものの変化球作品。ロボットモノでもある。厨二設定満載でそのテの方には好物かもしれない。評価は高いですが、とにかくクドイ、主人公がクソとかなり人を選ぶゲームです。
【シナリオ】
体験版のプレイをお勧めします。というのもまず出だしから独特の表現言い回しと切り込みで、一定数のプレイヤーは箱を積んでしまうと思われます。ライターさんの特徴であり、以降もこの書き方で進行していくため、苦痛を感じたら素直にプレイを避けた方がよいでしょう。
クドイですが丁寧なので伝えたいことは良く理解できます。話のぶっ飛びも殆どなくライターの自己完結は見当たらないのでその点安心して良いかと。とにかく、読みずらいだけなので。
公式サイトにもありますが軽く設定を紹介。
- 主人公らの住む町では、『歌う少女』少女Aの不気味な存在が示唆されています。
『歌う少女』を見たものは、同じく少女を見た全く無関係の他4人と『コミュ』として結ばれます。『コミュ』の面々は『アバター』といわれる凡そ7つに種族が大分される怪物を扱うことができます。アバターを操るには人間の精神力が必要で、精神力が尽きたときアバターは自動的に帰還します。一定範囲内に集まったコミュメンバーが多ければ多いほど、アバターは制御が容易になり強力な行動に出れます。最悪1人でも扱えますが、アバターが強力な種族(ドラゴンなど)だと操作が非常に困難になります。
アバターそのものは操作者に忠実ですが、その行動は操作しているコミュのメンバーの心理に捉われており、多数決で決定します。例えば一定範囲にコミュメンバーが4人おり、アバターを召喚、うち1人が敵対してコミュの3人をアバターで葬ろうとしても3人の意志が同一ならばそちらが優先され、3人の命令に従って1人を返り討ちにします。
アバターのその力は人外のもので、人助けにも使えるし人殺しにも使えるし、アバター同士の闘争にも使えます(お話では殆どアバターとの闘争で用いられます)
敵のアバターを回復不能に陥るまで破壊すると、自分のアバターはレベルアップします。レベルアップすると能力は強化されますが、より制御が困難になり、制御する精神力を超えてアバターが制御不能になってしまう(暴走:スタンピード)と操作者は精神崩壊してしまいます。
アバターを破壊されるとコミュのメンバーは全員精神崩壊し直ちに死亡します。すなわち「一蓮托生」。アバターは任意のタイミングで異次元に帰還させることもでき、コミュのメンバーが死亡などで欠けても他のメンバーがアバターを扱うことはできます。一度失われたコミュのメンバーは補充されることはありません。
とまあ設定がうまくできていて、使いやすくおいしいです。例えば1人のところを5人接続のアバターに奇襲されて、こちらもアバターを出して操作不利な状況・アバターが破壊されれば全滅という背水の陣で戦うかどうかの駆け引きは目を見張るものがあります。
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主人公の細かい回想、トラウマがクドイです。物語のテンポは良いのですが、この回想カットで結構削がれます。
一周目は紅緒√固定です。正義とは何か、正義の振りかざしどころを考える√。この紅緒というメインヒロインがなかなかに曲者で、脆くブレブレでおまけに大事なクライマックスでありえない邪魔の仕方をして幕引きに持ち込むため、「なんじゃこりゃあ」と紅緒√クリア時点で投げてしまう可能性があります。
しかしこのゲームの旨味は紅緒√以降にあります。せっかく紅緒√をクリアされた方は、是非その勢いで他のヒロインも攻略してください。
密√では、『バビロン』という強大な力を手に入れた主人公達が、このように強大な力を手に入れたものにありがちな行動を起こします。「ドッペルゲンガー」がこの√のテーマになるのですが、成程面白く物語を組んでくれていました。密BADも密GOODも考えさせられるお話でした。非常に満足度は高いです。
真雪√はこのゲームのテーマから少し逸れたお話です。この√は変化球ながらプレイヤーの間で非常に評価が高く、オークさんもこの√を一番推したいです。
匿名掲示板で真雪も手掛けるノベルゲーム「アクセプター」のお話とそれを取り巻く面々のお話です。このシナリオはかなり良く練られており、単品で作品として出しても遜色ない位個人的に評価しています。ここではあまり戦いは起こらないのですが、「アクセプター」にまつわる悲劇とその企業展開までの流れが激アツで、脆いオークさんはジーンときましたね…。
アヤヤ√は箸休め的なお話です。純粋なアヤヤが可愛らしく、シリアス展開もないですが取り立てて良い描写もなくあくまで繋ぎの役割でしょうか。黒幕が自然にちらっと顔をだすので、しっかり読んでおきましょう。
カゴメ√でこれまでの伏線を大まかに回収しつつ、青春チックに話を折りたたみます。
いやーバレバレの伏線だったのかもしれないですがオークさんはおバカなのでコッテリ騙されましたね。気付けよ!ってポイントはありながら、文章が上手くて全然意識させられなかったんだもん。wikiなどは見ずにプレイした方が良いです。騙された時の感動。
風呂敷を広げすぎたために、幾分苦しいところが見られます。オークさんも違和感を感じてしまったのは暁人が頑なに密を守ろうと動く展開と、ロンドを守る展開です。
この√では密との接点は少ないながら、暁人がかなり無理して密を救おうとします。暁人は無類の女好き、困っている女を放っておけない人物として描かれているのでそれを考慮すれば納得ではありますが、疑問符を浮かべてしまうプレイヤーは多いかもしれません。
PKに相当な憎悪を持つ主人公ですが、この√でトチ狂ってやらかしたロンドに対してやたらと情を掛けるのもご都合主義というか主人公のブレブレ度が気になってしまいます。
カゴメ√もまた賛否が多く、苦しい畳み方をしているのは見て取れますが、ホロッときたのでオークさん的にはOKです。絶望的なENDの方が印象としては強烈だったのかもなあと悔やまないでもない。
【キャラクター】
道化・暁人…恐るべきヤリ○ン。フェミニストを気取り、不都合があってもとりあえずセッ○スで解決してしまいます。恐るべし。トラウマがありながらも、アバターでのコミュ殺しにはあまり躊躇いがありません。変な方向に振り切っていないので良いと思います。「道化」といわれるだけあって、その振る舞いを見れば納得せざるを得ないか。
うそつき・真雪…√プレイ前と後で大きく印象が変わるヒロイン。√があることで非常に恵まれています。そのまんまでも可愛いんですけどね。
偽メイド・春…メインヒロインながら√が存在しないおっとりビッチ。でもしっかりえちちしちゃいます。このゲームの方向性からは異質なキャラクター性であり、普通のゲームでもなかなか見られない、良いキャラです。下ネタがそこまでいやらしくなく、ムードを買ってくれています。ファンからFDを望まれるのもうなずける。
正義の味方・紅緒…どの√でも暁人すきすき。紅緒の正義は非常に脆くブレています。ウザキャラの側面もあり、苦手な人には苦手なタイプ。この子を固定√に持ってきているが為に、作品の評価がしずらくなります。
魔女・カゴメ…暁人が他のヒロインとヤリまくってても怒らないどっしり構えた幼馴染。
(Ⓒ暁WORKS 2009-)
チンピラ・伊沢…主人公のコミュメンバーで厨二ギャング。サブキャラながら魅力的で、物語を良く彩ってくれています。
覇王・我斎…クールな悪役。嫌味がなく、筋が通っていて敵キャラとしても最強格と魅力的なサブキャラ。このライターさんはサブキャラの演出が上手いなあと思わせてくれます。
騎士・夜子…彼女を助けるところから物語が始まります。アバターの設定の裏を突くというか、いやあこれは上手く作ってますね…
褐色のプリンセス・ロンド…合理的ながら暴走も見られる面白いキャラクター。褐色というだけでポイントが高い。彼女の操るアバターもクセがあり、設定の面白さを体験させてくれる。
【絵・演出】
一部場面に合わない背景の使い回しがあり違和感を覚えます。戦闘シーンは迫力があり、うまくCGを多用してくれているので臨場感があります。傷ついたキャラクターの描写もきっちりしてくれていますし、大変よろしい。一枚絵は差分含めず全部で130枚となかなか奮発してくれているのですが、もう少し戦闘シーンの一枚絵があるとなお良かったかも。まあこの辺は予算の都合ですかね。
【えちしーん】
アニメ絵に近い感じなので抜けるかと問われれば抜けませんが、こういったゲームでは雰囲気作りのためにもえちしーんの挿入が大切なわけで。夜子以外おかしなえちしーん挿入は見られなかったので概ね満足。
【音楽・効果】
ボーカル曲が6つ。BGMも場面にあっていてよろしく、文句のつけようがありません。
1stOP「内なる雨」の歌詞冒頭にそぐわない物語であったので若干違和感はありますが、曲自体は感傷的で評価が高いのも頷けます。
2ndOP「竜たちノ夢」挿入でびっくりしました。ここで共通√が終わって個別に入るのですが、タイミングも曲の雰囲気もバッチリですね。単品で聴いても心地よい曲なのでゲームやらなくてもこれだけでも聴いて欲しいですな。
ちなみにED「Run」がオークさんの一番のお気に入り曲です。
【まとめ】
卒なく完成度が高い作品です。カゴメ√でいろいろ突っ込みたくなるところはあるんですけどね。あまり斜に構えず、自然にシナリオを受け入れると楽しめると思います。
共通→紅緒√だけでもかなり分量がありますが、ほかに同分量の4ルートあるので1日で読み切れる量ではないと思います。丸2日くらいじっくりプレイできる時間が欲しいです。また、一気にカゴメ√までプレイしてしまうのをお勧めします。伏線の回収についてもそうですが、このゲームを味わう上で大切なのは全シナリオの網羅です。苦痛なく1ルート終えられたならその勢いでぜひ。
wikiを見てネタバレ知ってしまったりすると面白味がなくなるので、まずは体験版をプレイして書きクチに合うかどうかを確かめられるのがよろしいかと。厨二大好きオークさんは大満足でこの作品をプレイできました。
というかね、真雪√が本当に良い話だから見て… オタクなら共感できるポイントいっぱいあるから…
ミュルミナ
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