完結編となる3作目発売と同時にTrilogyBoxが出たので、満を持して購入。
当作は、同ブランドのFlyableHeartが好きだったこともあり気になっていました。
以下は3部作の1作目であると知った上での感想になります。
ミステリーというには謎解きをさせようという感じでもないのだけれど、サスペンスやスリラーかと言われたらもっと違うので、当作はミステリー”風”のなにかであるという前提で、感想を述べさせてもらいます。
そもそも、ミステリーであると公式は言ってませんし、ミステリーであるとするとミステリー警察が、やれ推理するに足る情報が全て提供されていないからミステリーとは呼べないだのとやかましくなる事も予想されますので、あくまでミステリー風ということでひとつお願い致します。
全3部作のうち1作目ですので、2作目の感想はこちら、3作目の感想はこちらになります。
追記:当シリーズの購入を検討されている方は、wikipediaは見ない方がよろしいかと思います。
ネタバレが満載なので、もし見てからプレイしたら面白さが半減していたことでしょう。
■テキスト・シナリオ
プレイヤーを驚かせる仕掛けが随所に用意されたシナリオであるため、内容に関しては殆ど触れることはできません。
とりあえず、ヒロイン達とはゲーム開始時点で初対面であるという、自分好みの設定だったのは嬉しい。
3部作という性質上の都合か、一般的なエロゲフォーマットである「どこかのタイミングで一斉に各ヒロインに分岐してそれぞれでエンディング」といった体裁はとらないことにしたようで、基幹となるメインストーリーがあり、そこからまず風呂屋シナリオへの分岐点があり、それを回避すると鍔姫シナリオへの分岐点があり、それも回避するとモー子シナリオへの分岐点があって終了といった形式。
なので、攻略順は分岐の順(風呂屋→鍔姫→モー子)にした方がよろしいと思います。
全員の個別が見たいのであれば、の話ですが。
問題は、個別シナリオの存在意義が希薄であるということ。
不思議だらけの学園で、いかにもな怪しさを放つキャラクターが意味ありげな台詞を吐いては消えてゆく中、とりあえずは提示された疑問(謎?)を片っ端から明らかにしてゆきたくなるわけです。
簡単に言いましたが、これは意外と大変なことです。
上手くやらないと別に気にならないし、どうでもいいやと思われるので。
はっきり言ってその頃にはもうキャラよりも話の方の優先順位が勝ってしまっているので、よほどでない限り個別を無視して進めたくなってしまいます。
そして、やってみてわかるのですが、当作(第1部)においてはその個別ルートの出来は正直あまり良くないというか、取って付けたようなものです。
実際、風呂屋シナリオに入ってしばらく、どうもやる気にならず放置してしまいました。
あまり時間が無いという人は、モー子以外の個別は無視してしまっても良いと思います。
ゲームの進行上問題はありませんので。
エロゲであるという存在理由以外は。
本編内Hシーンは各1個で、ルートクリア後にシーン鑑賞モードに夢落ちHシーンが1つ追加されるので、各キャラ2シーンずつの計6シーン。
言ったように半分は夢落ちシーンなので実質3シーンです。
当作にエロを期待している人は多く無いとは思いますが、念のためご報告でした。
■キャラクター
作品の雰囲気と舞台装置が重視される当作において、名前と見た目こそ特徴的ですが、あまりキャラクターは前面に押し出されている感じはしません。
まぁ、その理由が後々わかったりもするのですけど。
困ったことに、主人公をはじめとしてやや精神年齢が低いキャラが散見されます。
どうでもいいことでやたらと口論になるのが邪魔臭い。
小太郎が「みっちーにも子供っぽいところがあるんだなって」とか言うシーンが有りますが、むしろ普段から子供っぽ過ぎています。
そんなこと言ってる場合じゃないだろと、イラつく人もいるかもしれません。
わりと声を張るキャラが多いせいかなと思い、数キャラ個別ボリュームを落としたら気にならなくなりました。
第1部の時点では、個別にわざわざ入りたくなるような魅力が出きっていない点が残念なところ。
■ビジュアル
総合すると悪くはありません。
ですが、個別で見るとちょこちょこ気になるところはあります。
まず、背景は3Dレイアウトを使っているため破綻が無いのはいいのですが、小物類もそれで処理しているので安っぽさがあります。
夜が来た時の画面演出では3Dで組んでいることが活きていたので、そちらを優先したのでしょう。
雰囲気重視のこの作品においては、まぁアリの選択だったかもしれません。
個々のキャラとしては問題ないのですが、複数キャラになると急に色々絵的にあやしくなります。
キャラごとに得意なアングルや表情がある印象。
全体的に表情の表現力が弱みかもしれません。
ネットのトラップを引っ張り上げるシーンのイベント絵は、主人公とモー子の体格差どうなってんのよってレベルだったりします。
あとメインヒロインの立ち絵正面顔が脳勃起風味なのはどうにかならなかったのかと言わざるをえません。
よく見かけるだけにもったいない。
SD絵は非常にかわいらしい。
表情も豊かで微笑ましい。
急にすっぽんぽんだったりするのは画風なのでしょう。
かわいい。
■音まわり
全体的に声を張るキャラが多いせいか、リトさんが癒し。
淡々と冷静でありながら突き放した感じは無く穏やかな語り口。
クセになります。
クセになるといえば学園長もですね。
最初はどうかと思っていましたが、途中からはベストマッチだと認識を改めました。
主題歌はインパクト強めで雰囲気のある楽曲。
作中でも主題歌のアレンジが使われて、それも非常に良い。
OPムービーも文字演出はベタですが、ミステリーらしさと魔法を扱った作品の空気感が伝わる良いPVだと思います。
BGMもミステリアスな雰囲気を損なう事なく、場面によってはどことなく不安にさせられるような良いBGMでした。
■満足度
全然関係有りませんが、当作の発売1ヶ月前にはショさんが大好きな奇才、小山田伸氏がシナリオを書いたJOKERが発売になっていました。
そう考えると古いのやら新しいのやら、逆にわからなくなります。
そして買ったはいいものの、いかんせんプレイが壊滅的に遅い自分は、3部作という物量と時間的制約からなかなか手を付けられなかったのですが、先日インフルエンザという大義名分を得て、仕事を1週間程お休みできることになったのをいいことに、ようやくプレイと相成ったわけです。
結果、非常に満足致しました。
3部作の1本目という立ち居地ですが、本作は本作で一応の決着はしているあたりも上手い作りです。
最後に新たな謎が提示され、良い引きになっていると思います。
前作にあたるFlyableHeartも、絵柄の見た目からの印象を良い意味で裏切る工夫がされたシナリオだったのを思い出す出来だったので、前作ファンの人は問題なく楽しめるのではないでしょうか。
ミステリー”風”の少し不思議な世界やシナリオに、気持ちよく驚かされたいタイプの方にも是非オススメです。
めたすら
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