ゆのはな


OPテーマを聴きムービーを見て、雰囲気が良さそうだったので購入。
善人しかいない世界で、優しいお話をしっかりと語り切る。
有りそうでなかなか見当たらない、一貫して負の感情を覚えずに済む作品でした。
派手な仕掛けや目新しい展開・設定が有るわけではありませんが、きっと忘れないだろうなと思える魅力が有りました。
キャラの絵や塗りが気に入って、ムービーの雰囲気が好きであれば、期待を外される事はあまり無いのではないでしょうか。

■テキスト・システム
ゆのはな町の空気感が上手く文章から伝わってきて、それほど斬新な展開があるわけではありませんが、お話として楽しめました。
何が起こるでも無い日常シーンが長く続く(特にわかばシナリオ)のですが、それが全体的に地に足の着いたこのゲームの雰囲気を担っていますし、主人公やヒロイン・サブヒロインの人柄を見せるのにも一役買っていて、好ましい展開・演出でした。
ごく普通の日常シーンで説明的でなく、各キャラの物の考え方や世界の捉え方を伝えて来る巧みさは、なかなか他では見かけないものでした。
ただし、「よっしゃゲームやるぞゲーム! 激しく萌えたり燃えたりするぜ!」のような構えでプレイすると、確実に肩透かしをくらってダレるので注意が必要。
他ルートがかなりの薄味Hなのを補うかのように、穂波ルートでH分を供給してくるので驚きました。
後半からシリアスになるゲームは数多くありますが、その移行に失敗してプレイ熱が急降下するものが少なくない中、このゲームはむしろ徐々に温度が上がり、ここぞという時の演出も相まって非常に好みでした。
とは言え、宇奈月家周りの設定の投げっ放しぶり等は、気にならないと言ったら嘘になります。

桂沢親子の「あったかいジョーク」が凄く好きで、やたらとツボにハマってしまいました。
ジョークの出来自体もさることながら、声の人の演技がその味を高めているのは間違いないと思います。

ゆのはと由真をどう感じるかが、このゲームに対する印象を左右すると思うのですが、彼女達をキャラクターとして気に入ったので、むしろプラス評価でした。(攻略したいとはあまり思いませんでしたが)
脇キャラがただの賑やかしになっているゲームが多い中、年長組みがお話の支えになったり、別ヒロインのルートでも出番が無くなる事が無い等、主人公とヒロインだけの狭い世界になるのを防止していて物語世界の構築に貢献している点は、地味ですが好感触。
登場キャラが皆いい人である事に反感を覚える向きもあるかもしれませんが、このゲームではありだと思います。

余談ですが、作中やオマケDisc内ドラマでちょろっと出てくる(他キャラの想像の世界にのみ存在する)ブラックわかばが凄く好きです。
「ジャンプしてみーひんかー?」

■主人公
厭味が無く、マイナス方向に馬鹿な言動も無い点が良かった。
一生懸命さと真面目さが伝わってくるので、少々うっかりな事があっても許せてしまうような、いわゆる愛すべきお馬鹿でした。

■ビジュアル
差分が結構多いとは言え物語の長さからすると少な目ですが、立ち絵での表現力が高かったせいか、プレイ中には気になりませんでした。
終わった後に数えてみて、少なかった事を知って驚いたくらいです。
絵柄に関しては、全体的に幼く見える点など各人の嗜好によって評価は分かれるとおもいますが、私は好きなタイプ。
立ち絵は、鬱陶しく無い程度に変化や動作をして可愛らしく、背景から浮く事も無く統一感があって良いです。
イベント絵で主人公の顔がかなりハッキリ描かれている方なので、そういうのが苦手な人はご注意。
塗りや色の使い方にしても、世界観を活かすためかビビッドな色は使用せず気持ち淡目な塗りで、白が多い背景を前にしても落ち着きのある処理にされているのが、雰囲気作りに一役も二役も買っていると思います。
元々私自身が雪好きなせいもあると思いますが、随所に使われる雪のエフェクトも印象的でした。

■音まわり
OPテーマ「冬だより」及びEDテーマ「約束~resume~」は、曲と歌声共に押し付けがましさが無く穏やかで、このゲーム同様じんわりと印象に残るものでした。
BGMは場の空気作りに貢献しているように感じました。
声は良い意味で言う事無し。
お爺さんもお婆さんも、ヒロインも脇役もきっちりハマってました。

■満足度
これぞ「雰囲気ゲー」という出来。
昔話や御伽噺を聞く時に似た心持ちで楽しめました。
読書で言うところの読後感にあたるものが、非常に良いゲームでした。

ヒロイン達(神様除く)は一見しただけでは一山いくらで売っているようなキャラに見えますが、それぞれ”自分”を持っていて作品世界から浮く事もなく、良い描かれ方をしていました。
ルートに入って相手を深く知るにつれ、ヒロイン達の魅力が増して行くように感じたので、見せ方が上手いのだと思います。
ただ、選択肢による分岐は全くと言って良いほど無く、個別ルートに入ったら後は読むだけのようなもの。
それに加えて日常シーンがだいぶ長いため、私のように「雰囲気重視」という人間でないと、中盤に退屈する可能性が高いでしょう。
同じ理由で、ドラスティックな変化を伴うドラマや派手なドタバタ劇、血沸き肉踊る展開等を期待する人には合わないと思います。

個人的には、いまだに好きなエロゲBest3に入っている作品。
冬になると必ず思い出します。


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めたすら

季節ゲー、田舎ゲー、雰囲気ゲーが好物。バカゲーは別腹。 無気力主人公は苦手。 予約購入したエロゲを写真で残す奇癖有り。(Twitterのモーメント参照)

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